「自社だけ」から「グループで」へ
TPOがLTHDとのグループインで挑む次の10年
2025年4月、仕事と子育てなど、プライベートとの両立を支えるコーポレートコンシェルジュサービス企業TPOは、リンクタイズホールディングス(以下、LTHD)にグループインした。両社に共通していたのは、変化を柔軟に捉えるスタートアップマインド。
エグゼクティブ層の時間価値を高めてきたTPOは、LTHDのプラットフォーム×ソリューション事業とどのようなシナジーを生み出し、新たな成長を描こうとしているのか。TPO代表取締役のマニヤン麻里子(以下、マニヤン)が、その意思決定の舞台裏と、グループイン後に見えてきた成長戦略を語った。
仕事も家庭も犠牲にせず、全力で取り組める環境をつくるために
欧米で子育てをしながら活躍する女性マネージャーを数多く見てきたマニヤンは、自身も日本で幼い子ども2人を育てながら働くなかで、仕事に十分集中できない現実を痛感した。
「約10年前の日本では、子育て中の女性が責任や勤務時間を減らすのが当たり前で、仕事か家庭かの二者択一を迫られる風潮がありました」
そこで、働く女性100人へのインタビューを実施。同じ悩みを抱える人が数多くいることを確信し、2016年にコーポレートコンシェルジュサービス企業TPOを創業した。コンシェルジュが企業に常駐し、育児や介護、家事、来客対応など生活全般をサポートすることで、従業員が仕事とプライベートの双方に全力で向き合える環境を提供するサービスだ。
「一般社員の方にもご利用いただいていますが、中核となるのは、時間価値を強く意識するマネジメント層やエグゼクティブ層です。今は女性管理職も増えています。そして、外からは華やかに見える方々も、それぞれ家庭やプライベートでさまざまな課題を抱えています。そうした一人ひとりに寄り添い、本来注力すべき仕事に集中できる環境をつくることが、私たちの役割です」
より多くの働く人々に解決策を届けたい
TPOのサービスを軌道に乗せた10年。マニヤンのなかで、この事業をより多くの働く人々に広め、1人でも多くの人に解決策を届けたいという思いは強まっていた。
「ただ、事業を拡大するには、自分1人ではとても足りない経営ノウハウが必要で、ブランド力にも課題がありました。
そんなとき、かねてより面識があった取締役会長の高野 真からLTHDの経営メンバーに一度会ってみたらどうか、と言われました。TPOの中心顧客であるエグゼクティブ層・マネジメント層と、LTHDの顧客基盤との親和性の高さに気づき、グループインの可能性を考えるようになったのです」
LTHDは、プラットフォームとソリューションの2つの機能で構成されるグループだ。Forbes JAPANなどのメディアやサロンを通じて、エグゼクティブと継続的に向き合う接点をつくり、信頼を醸成している。もうひとつの柱であるソリューション機能では、企業の経営課題を解決する事業も展開している。
LTHDとの対話は、1年強にわたって続いた。
「対話のなかでわかったのは、LTHDがM&Aを会社の価格や規模だけで判断していないということです。グループのカルチャーやブランド、社員や顧客を大切にし、共に成長できる事業を求めている。つまり、M&Aを通じて既存事業に新たな顧客接点を生み出し、ソリューション提案の幅を広げることで、グループ全体を強くしていくという考え方に大きく共感しました」
そのうえで彼女がグループインを決断した決め手について、こう語る。
「変化をポジティブに捉える姿勢、柔軟かつ素早く動けるなどのスタートアップマインドが共通していたからです。私たちが加わることで、1社単体ではできなかったことが可能になることはもちろん、同時にグループも成長の幅を広げられるのなら、その可能性に賭けたいと思ったのです。LTHDとならば、事業成長のスピードを上げ、創業から描いてきた夢をより確実に実現することができる。さらには、社員にとっても、自社だけでは経験できなかった大きな仕事や挑戦の機会をつくれる。そう思えたことで一歩踏み出すことができました」
LTHDの営業トップが参画し、加速した経営
グループイン以前のTPOは、少人数で手が回らない営業体制、案件規模の限界、経営層への直接的アプローチの難しさという3つの課題に直面していたと、マニヤンは説明する。
ただ、グループインの事前の対話では、TPOが具体的にどのチームと組んで動くかといった詳細までは話し合っていなかった。そのため、細部については、事後のPMI(Post Merger Integration/M&A後の統合プロセス)の対話で決めていったという。
「事業拡大という目標は明確でしたが、実現方法についてはコーポレートコンシェルジュサービス事業を、どのようにLTHDの事業の一部としてオファリングに組み込むかというテーマで日々話し合いを深めていきました」
TPOには、リンクタイズの営業執行役員である石原瑠衣子が参画。
「新しい体制を大局的な視野をもった方々が描き出していく絵を見て、よりTPOの未来への道筋がくっきりと見えてきた気がします」
営業トップがTPOに参画し、リンクタイズの営業チームと連携しやすくなったことで、TPOが抱えていた少人数で手が回らないという営業面での課題も解決に向かっている。
「LTHDはグループ内の企業がもつコンテンツやサービスを包括的に提案することが多く、TPOの営業チームが連携して動くことで多くの学びを得ることができ、より多くの案件に対応できるようになりました。私自身も、1人の力では得られなかった経営ノウハウを吸収できています」
さらに彼女が危惧していた案件規模の限界も、グループの包括提案に組み込むことで解決の糸口が見えてきた。以前は数人を派遣して常駐する規模だったが、現在は10人単位で人員を送り込める安定した体制を構築しつつある。
残る課題だった経営層への直接的アプローチも、LTHDのプラットフォームの信頼基盤・認知度により可能性が広がり、直接対話できる機会が増えているという。
こうした変化に対してTPOの既存従業員の反応も気になるところだが──。
「バックオフィス機能の統合により、業務の効率化と安定化が進み、労働環境は良くなったと思います。グループインについても、社員全員に喜んでもらえました。顧客がエグゼクティブ層や経営者層中心であることもあり、そうした層に信頼されるForbes JAPANブランドの力をもつLTHDに認められたことが、メンバーの自信と誇りにつながっています」
グループインが、次の成長を加速させる
グループインから間もないなかでも、すでに成果は生まれ始めている。LTHDの営業力や顧客基盤との連携により、マニヤン自身が直接アプローチしていないエンタープライズ企業との商談も複数立ち上がるなど、TPO単独では得られなかった新たな顧客接点が生まれている。
「これまでTPOだけでは届かなかった企業にも、グループの力を借りることでアプローチできるようになりました。自分たちのサービスを、より多くの人に届けられる可能性が大きく広がっています」
TPOにとってLTHDへのグループインは、単なる経営基盤の強化ではない。グループのアセットを掛け合わせることで、事業成長のスピードを高め、より多くの課題解決につなげるための新たなステージとなっている。
最後に、グループインを検討する経営者へのメッセージを述べてもらった。
「Forbes JAPANが掲げるポジティブジャーナリズムには、私もメンバーも大きく共感しています。TPOもまた、『光が当たっている人々であっても、プライベートではさまざまな困りごとを抱えており、その課題に寄り添いたい』というポジティブな思いから生まれたサービスだからです。
オープンマインドな経営者や、ポジティブなカルチャーをもつ企業であれば、一度話し合ってみるとよいと思います。ただしそのときは、自社だけでは成し遂げられない大きなチャレンジや夢をもっていくことを、忘れないでほしいですね」
Profile
まにやん・まりこ
一橋大学社会学部卒業。仏HEC経営大学院修了。パリの出版社を経て帰国、ゴールドマン・サックス証券等の金融機関において、金融商品開発、マーケティング、営業に従事。2016年にTPOを起業。ISAKファウンダー&アドバイザー。セゾンテクノロジー社外取締役。株式会社スコアネット代表取締役。
text by Ryoichi Shimizu / photographs by Shunichi Oda / edited by Akio Takashiro